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バス停の犬①
 あれは数年前の夏だった。私は茨城にいる友人を尋ねていた。その友人は高校時代の奴であり、現在も連絡を取っている数少ない友人の一人である。その彼と一緒に遭遇した出来事…。

・・・
・・


 私は、友人のIに呼ばれ何もない茨城の駅のホームに着き、なぜこんなところまで来てしまったのか考えながら駅の階段を下りていた。Iは特に用事はないとの事だったが、その前の数日、彼にある相談を受けていたので、それに絡んだ話でもしながら飲もうか、などと漠然と思いをめぐらせる。さして乗り降りのある駅でないのか、一緒に階段を下りているのは、絵に描いたような老人と絵に描いたような女子高生だけである。ケータイを見ると午後8時を回っていた。

Я (しかし、なにもなーな…)

 駅の改札を出ると、そこにあるのは、ただひたすら闇…。電灯もない。本当に何もないところである。駅だというのにタクシーすらいない。私と同じ電車に乗っていた二人は駐輪場に向かい、駅の入り口には私一人と誰か迎えなのかハザードを出した車だけになる。

Я (おいおい、誰もいねーじゃねーか・・・ん?)

 私の携帯がフーバーオーバーの着歌を流す。この曲が鳴るのはメールでなく着信である。待ち合わせをしているIからだった。

Я 「もしもし?」

I 「おっす。久しぶりー。あのさー、ちょっと遅れそうなんだけど・・・」

Я (やっぱりな・・・)

I 「で、悪いんだけど、ちょっと待っててくれない?」

Я 「どれくらいよ?」

I 「えーと、ちょっと待って・・・うん・・・うん・・・(誰かに何かを聞いている)・・・えーと30分くらいらしいんだけど・・・」

Я 「おいおい。長ーよ。」

I 「いや、まあ、そうなんだけどさ・・・あ、そうだ」

Я 「ん?」

I 「目の前にバス停ない?そこに来るバスは一路線だけなんで、そいつに乗って○○まで来れば・・・」

Я 「ちょっと待てって・・・」

 目の前には確かにボロボロに錆びて黒ずんだバス亭があった。・・・正直、バス停の定義がバスが止まる場所の目印なのだとしたら、それはバス停と言えないでは、とも思う。つまり、目印になり得ないくらい汚れて付近の雰囲気と同化しているので。さらに、待ち時間を30分と断言しないのと、先ほどのゴソゴソしたやり取りから私はIに聞いた。

Я 「隣に誰かいんの?」

I 「あ、ああ・・・ちょっと・・・」

 彼は言い淀んだ。・・・流れ的に間違いなく女だ。自分が迎えに行くと言っておいて、先客がいるとは・・・。しかし、私はその女に心当たりがあった。

Я 「つまり、隣の人を送らなきゃなんないってこと?」

I 「あー、まあ、そういう事なんだけど・・・」

Я 「じゃあ、ここで待ってるよ。バスであんまり土地勘ないとこをウロウロしたくないし・・・」

 私は目の前の古い(というかボロい)バス停をチラッと見る。そのバス停を見ていると、正直どこへ連れて行かれるかわからないといった不安さえ感じる。いつの間にかハザードを出して止まっていた車は目的の人を乗せたのか、駅から離れつつあった。その車と入れ替わるように向こうから車が何台か向かってくる。Iはしばらく考えたようだった。いや、となりの人間と話をしていたのか。

I 「あ、やっぱりごめん。今から行くよ」

Я 「え?大丈夫なん?」

I 「人がいても平気?」

Я 「ああ。別に構わないけど・・・」

I 「じゃ、ちょっと待っててすぐ行くからさ。たぶん10分くらいだと思う」

Я 「んじゃ、よろしく」

I 「あいよー」

 私は電話を切った。どうやら、例の女と謀らずもお目にかかれるらしい。前述したが、私はその女と面識は無いのものの話は聞いていたのである。もちろん今から私を迎えにくるIから。

 Iが着くまで、まだ少し時間があるようだ。では、少しその話をしておこう。Iからされた相談の内容を。・・・程度は違うかもしれないが、誰にもある経験だ。正直、相談を受けたとき私はそう思った。多少のネタにはなるかもしれないがよくある話だ。数時間後、よくある話じゃ済まねーよ、と思うのだが・・・。

次回へ続く・・・。
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2012/11/22(木) 19:20:13 |
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