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揺れる犬③
久々に揺れる犬の続きです。読んでない方はどうぞ。
揺れる犬①・揺れる犬②
___________

揺れる犬③

 私と相方Yは危険を顧みず、ついに長岡の我が家へと帰ってきた。その町はまさに闇だった。しかし、一切の光が無い訳ではなく、無数に動き回る光があった。車のライトだ。皆家に帰るのか、それともどこかへ行くのだろうか?信号が消えているので皆運転が慎重になっている。交差点では渋滞になったいるのがわかった。私達の車は、多少その渋滞に捉まりながらも家を目指す。家というのは彼女のアパートだ。私のアパートは今いる場所から多少距離があり、とりあえず近い方の家から寄ろうということで落ち着いた。

・・・
・・


 彼女の家は住宅街である。この町ではほぼ唯一の光源となった車も付近にはあまりいないらしい。暗闇の中で私達はその家のドアを開けた。

2人 「うわぁ・・・」

 電灯代わりの携帯のバックライトに照らされて、浮かび上がった光景に、私達はただ呟いた。しかし、彼女の家は越してきたばかりというのが幸いしてか、食器が多少散乱している程度ですんだようであった。しかし、街が停電なのだ。もちろん家の電気も点く筈が無い。さらには水道・ガスもダメだ。その後、定着する言葉だが、ライフラインという奴が全滅だ。とりあえず、すぐに食べられそうな物や服などを持って車に戻る。すると・・・

ガタガタ・・・

 ちょうどドアを出た時だった。かなりの揺れを感じた。

Я (おいおい・・・)

 実際はただの余震だったのだろうが、正直今までの人生の中で最も大きい地震だと感じた。彼女も取り乱しはしないが、不安な表情を浮かべている。実際に揺れていたのは数秒だったのだろうが異常に長く感じた。そして車の中ではわからない音がある。壁の軋む音、窓ガラスが揺れる音、食器がぶつかり合う音・・・そういった聞きなれない音達が不安をさらに掻き立てる。

Я 「さて、どうする?」

Y 「う~ん・・・」

 彼女も困惑しているようだ。とりあえず、今度は私の家に向かおうという事になった。

・・・
・・


 どうやら、停電でない地域もあるようだ。私達はさして広くもないが、店などが立ち並びどこか誇らしげに光を放つ通りを進んで行く。普段は全く気に留めないが、今日ばかりは街に明かりがあるということに感動する。ふと気付くと二人とも空腹だということに気が付いた。自身らの置かれた状況に追いつくのが精一杯で、そういえば、昼からなにも口にしていない。しばらく進み、電気の点いているコンビニを見つける。まさか営業はしていないだろうと思ったが、目を凝らすと店内が人であふれている。流石のコンビニエンスである。そこの駐車場に車の止めることの出来なかった私達は隣のカラオケ店の駐車場に車を停めコンビにへ入った。

Я 「すげー人・・・」

Y 「だね・・・」

 店内にはもう数十人という単位の人達がいた。そこも驚きどころだが、さらに私が驚愕したの商品棚の空き具合だ。商品がガラガラな店内は一見して異様だと感じた。皆ここを頼って来ているのだろう。すでに本震発生から3時間ほどが経過していたので、さすがにおにぎりや弁当などはなく、パンもほとんど残っていない。私達は多少の菓子と飲み物を購入した。今のうちにもっと買い貯めた方が得策なのかもしれないが、あまり菓子などを食べる気分でもなかった。私達はレジの行列に並ぶ。二つあるレジではバイトっぽいおばちゃんとにーちゃんが懸命に客をさばいているが、一向に客は減らないようだった。それもそうだ、もしかしたらこの付近の住人達全員が来るかもしれないのだ。そのおばちゃん達はいつからレジに立っていたのだろうか。余震も続いているというのにこうして私達のようにこの店を頼ってくる人達のためにレジを叩き続けているのだ。

Я (大変だな・・・)

 と思いながら順番待ちをしていると、やがて私達の番になった。その時・・・

? 「すいません!遅れました!」

? 「お疲れ様です!」

 何人かの人が店内に入ってきた。

? 「何か出来る事ありますか?」

 先頭にいた初老の男性はそう言うと、おばちゃんの返事も聞かカウンターの内側へとまわった。一緒に来た連中も同様だ。

? 「いらっしゃいませー」

 彼等はどうやらこの店の店員らしい。手早くおばちゃんのサポートに入り私の買った物をビニール袋へ詰めていく。

Я (この人にも家があって、家族がいるはずなのに・・・)

 彼等は制服も着ずに来た格好のままレジで働いている。正直ただのバイトだろう。この時間はシフトでなかったかもしれない。いや、もし担当の時間であったとしても、来れなくて誰が責めるだろうか。なのに彼等は働いている。

Y 「う・・・」

Я 「ん?・・・どした?」

Y 「感動じだ・・・うぅ・・・」

 彼女は涙もろかった。しかし、ぐっと来るシーンだったのは間違いない。我々は普段絶対に言わないお礼を丁重にレジの人達にして、店を後にした。


続く・・・
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