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貫く犬
 以前、ブランディングをした時からボディアートに興味を持ち始めた。このボディアートというのはわかる人にはわかるがわからないひとには全くわからないという芸術(?)である。私もそれまではわからない側の人間だった。しかし、ブランディングによって私の考え方は変わり、それ系のサイトをウロウロするようになった。そしてボディピアスを知る。知った時は別に自分でしようとは思わなかったが、インパクトが相当あったことを憶えている。
 ある時あるサイトでボディピアスの体験談を読んだ。それは舌にピアスをした女性のもので、驚くほど痛くなかったというものだ。調べてみるとそういった体験談は多いことがわかった。どうやら舌の中心付近は痛点がないらしい。私はその時これだ!と思って、ピアスのHow toを勉強し始めた訳である。(勉強と言ってもサイトをウロウロするだけ)
 そこから必要な器具類を揃えるのにあまり時間はかからなかった。揃えた物はピアス、ニードル、リステリン、タオル、鏡等である。やり方は簡単だ。ニードル(すげー鋭い針、φ1.6mm)で舌に穴をあけてピアスを入れるだけという単純な作業なので後は本人のやる気しだい。
 10月の某日決行の日が来た。まずはうがいだ。リステリンの原液を口に含み1分待つ。これが結構強烈・・・。で、鏡の前で舌をべーと出してみる。以外にも下には伸びるのに前には伸びないものだ。マジックでマーキングを試みるが、所詮はその辺に売っている油性マジックである。全然マーキング出来ずに変な味がしただけで終わる。まぁいいかと思って、いざニードルを手にする。

(怖ぇ・・・)

 少してが震える。痛くない(たぶん)とわかっていても自分で自分の舌を針で貫くのは相当な恐怖だ。小一時間部屋をウロウロしてしまった(やはりビビッてる)。
 そして覚悟を決めた。ほとんど勘で舌の中心にニードルを当てる。そこで止まると恐怖が増すだけなので、間髪入れずにニードルを押し込む。

ブヅッ

 と、音はしていないだろうが、自分の手が感じた感触はこんなカンジだった。舌というものは、思ったより外皮(?)が硬く、弾力があり、ニードルを突き刺す瞬間と突き通す瞬間の2回、ニードルが薄皮を「ぷつっ」突き破る生々しい感触がしっかりと手に残った・・・。
 なんとかニードルを通したものの、ここからが大変だ。舌を出したまま、ピアスを入れなければならないが、その作業が思ったより難しい。しばらく四苦八苦している内に、なんとニードルが抜けてしまった。慌ててピアスを押し込んでみるが、後の祭りである。なんと、ものの数秒で穴は塞がってしまった。ホントかよと思うかもしれないがホントである。ニードルはそれだけ鋭い。とにかく必死の覚悟で空けた舌の穴が消えた訳である。もーその時は怒りだか悲しみだかわからないがテンション上がりまくりだった。悩む前にいってしまえと言う感じで、同じニードルを使って適当に一気に舌を貫いた。(注:ニードルは使い捨て品です。)そこでまたもやハプニング発生。口の中で妙な味が・・・

(うゎ・・・だ・・・)

だくだく。。。(←結構な量)

(なぜだ・・・1回目は出なかったのに・・・)

 しかし、ここで諦める訳にはいかない。口の中と机の上と手を血だらけにしながら、本日2回目のピアスとの格闘である。この際、出血は気にせず、結構慎重にピアスを舌に押し込んでいった。

・・・
・・


 そして、ついにピアスを通すことに成功。私は血だらけでガッツポーズをした。実際、血は出たものの、もともと痛くない箇所だったのか、ある種の興奮状態だったのか痛みはほとんどなかったと思う。
 ピアスを入れてしばらくすると舌が腫れてきた。痛くはないのだが、妙な違和感がある。うまく舌を動かすことが出来ないので、呂律が回らないし、食物もうまく食べられない。3日くらいは固形物はほとんど食べることが出来なかった。しかし、5日目くらいから腫れは引き始め、1週間ほどで違和感がなくなり、多少は活舌が悪くなったものの、不自由はたまにピアスを噛むことくらいである。
 その後は日常生活においては全く支障がないと言ってもいい。絶対に吹けなくなると思っていた楽器もなんと吹けてしまった。舌にピアスをしている管楽器奏者などそうはいないだろう。最初の頃は会う人会う人に見せていたが、ほとんどの人のリアクションと、さらには次の質問まで一緒なのでメンドーなって人に見せるのをやめた。
 私はこのピアスをして本当に良かったと思っている。愛着も沸くし、満足感もあるからだ。こういう気持ちを持ち続けることが出来るならば、別の場所にピアスを増やしていくのもいいかもしれない・・・。
 しかし、何年か後に私はこのピアスをはずすことになる。その話も長くなるのでまた機会があれば・・・。
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焼く犬
 私の左手の甲を見たことがある人は知っているかもしれないが、私の左手の甲には十字型の火傷の痕がある。これは不慮の事故でついたものではない。自分であえてつけたのだ。
 この傷をつけたのは記憶が定かではないが、確か2002年の夏休み前だったと思う。そのころ、ある事が原因で(この詳しい話は機会があれば)ある女性を傷つけてしまった。まぁ、そのことをキッカケにして自傷したかっただけだと思う。
 とにかく、その『ある事』があった日から少したってだと思うが、なんとなく自傷に走りたくなった。実は最初は手の平を・・・えーと、千枚通しというのだろうか?・・・それで貫こうと思っていたのだ。なぜかと言えば、たまたまそれが目に付いたそれくらい自分が許せなかったからだ。しかし、当時は定期演奏会の練習も本格化してきたところで、そんなことをすれば楽器が吹けなく(握れなく)なるという思いが頭をよぎった。・・・今考えれば、そこで自分の吹奏楽人生に終止符を打つのも良かったかもしれないが・・・。ともあれ、多少なりとも冷静さが残っていた私は、左手の平に向かって、それを振り下ろす直前で思いとどまった。たぶんビビッてた
 しばらく考えた後、他にアイテムがないか部屋を探す。目に付いたのがアルミの針金だ。そこで俺が思いついたのがブランディング(焼印)ってやつだ。なにかの本で読んだことはあったが、まさか自分でやることになるとは思わなかった。このブランディングというのは過激なボディアートの一種で、和名のとおり、熱した金属(主に何かを形取らせることが多い)などで表皮より下の脂肪あるいは真皮に達する程の焼印(つまり火傷)をつけることである。真皮に達する程の火傷のため、痕が消えるまでに何年もかかったり、痕が一生消えないこともある。
 私は、拾ったライターのガスの残量があるのを確認した。ラジオペンチもあったし針金で早速形を考えた。しばらく考えて、作るのが簡単そうな一生自分の罪(十字架)を背負うという意味で、十字型を作った。場所は右手で型を押し付けるため、左手の甲にすることにした。甲だったら物を握ることも出来るだろうと考えたのだ。消毒液は無かったが、冷水は用意し、準備OKである。当たり前だが、手元にマニュアルなど無い。もう勢いのみである。とりあえず、ラジオペンチで型を持ち、ライターで熱する。冷静なつもりだったが、手がカタカタと震え出し、嫌な汗も出てきた。ただ、止めようという気は無かった。(罪の意識の成せる技?)型を熱しながら、手の甲のどこに痕をつけるかを考えていたが、それについて一つ心配なことがあった。それは、血管の事である。おそらく、血管は真皮の中にある為、余程深い傷をつけない限り血管には問題ないが、手の甲は皆さん御自分の手を眺めて頂ければ分かるだろうが、脂肪が無い。手の甲に血管が浮き出ているのも分かる。つまり、表皮の下がすぐ真皮なので、あまり強く型を押し付けてしまうと傷が真皮の中にある血管に達してしまうかもしれないのだ(やはりビビッてる)。そういったことも考え、あまり血管の見えない手の甲でも小指の下あたりにすることにした。

 ・・・考えているうちに型を熱してずいぶん時間がたった。心臓の鼓動は自分の耳に届くほどに感じられる。俺は覚悟を決め、震える右手で、もう十分熱を持ったであろう自ら灼くその型を左手の甲に落とした。

・・・・その瞬間、よく聞き覚えのある音がした。
・・・・「ジュッ」という『肉の焼ける音』だ。

「っ・・・・・・・・・・・!!!!!!」

 俺は大声で叫びたいというのと左手を振り回したいという衝動を抑えた。そして、次の瞬間、右手で持っていたラジオペンチを使い、型を左手に押し付けた。今度の音は今でも鮮明に憶えている・・・・。最初の音より大きく生々しい「ジュワ!」という肉の水分が蒸発する音だ。詳細は違うかもしれないが、型はその熱ゆえに表皮を難なく溶かし(?)、さらに真皮にまで喰い込んだように見えた。
 私は冷水に手を浸しながら、顔を伏せ、自らの望んだ痛みに耐えた(自分に酔ってる)。そして傷を見る。手を冷水に浸しても一向に型が外れないということが、それが肉に『食い込んでいる』という事実を物語っていた・・・。俺は痛みに耐えながら手の甲からそれを引き剥がした・・・。

 それから、一ヶ月程(長かった)で傷は安定し包帯も取れた。勿論、痕は残っているがそれは承知の上だ。今では結構キレイな十字型が見て取れる。自分ではあまり気にしていないのだが、他の人から見ると目立つらしく、「どうしたの?」と聞かれることよくがある。そういう質問には、「自分でやった」と言うのだが、「なんで?」という質問にはあまり答えていない。説明が面倒だというのもあるが、時間のたった今、理由が薄れてきているからだ。
 ま、今では勢いに任せてもっとやばい方へ走んなかったので良かったかなぁと思う。・・・最近は傷が薄くなってるような気がする。傷をつけた理由が薄れたからか??
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