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不本意な犬
 いやいや、8月31日に演奏会があった訳であるが、有意義に終了した。前日に楽譜が十数曲配られたり、それでも私が一晩中練習したsoloが当日の朝、あまりのヤバさにリストラされたりと、波乱の予感というか明らかな前振りは多分にあったが、なんとか無事に企画を通すことが出来た次第である。


 ここに内容などを書いてもイマイチ面白さに欠けるので、割愛するが、何を書くかと言えば、その後の話である。つまり打ち上げだ。この打ち上げで、どれだけ濃い経験をしたかで人間の大きさが決まると言っても過言ではない。皆さんの周りの兵と呼ばれている人達(例えどんな意味を含んでいるとしても)には、飲み会等での伝説が数多くあるはずだ。私も過去の打ち上げでの濃い経験は多少あるが、女子トイレに立て篭もったり、線路の上で寝て電車を止めたり、救急車を呼んで数十人の野次馬を作ったり(事件な犬参照)したことは無い訳で、偉大な先人達には及ばない。そして、我が部が最も打ち上がるのが、今日この日・・・演奏会に打ち上げである。私は胸騒ぎを感じていた。

・・・
・・


 しかし、予想に反して、打ち上げは普通の雰囲気のまま始まった。良い感じに酒と花束が乱れ飛び、波乱はあまり無かったように思えた。打ち上げ中盤、

Y 「はい。それでは、卒業生に皆さんに花束を・・・」

 幹事のYが花束を促している。不肖ながら私はそれを受け取った。隣には同様に卒業生が立って花束を受け取っている。

Я (やっぱ込み上げるものがあるな・・・)

 先刻イッキしたビールかも・・・すると、

Y 「では、卒業生の皆さんから一言ずつ挨拶を貰いたいと思い・・・」

 Yが我々に感動にスピーチを振ろうとしたその時、

その他大勢 「Hさん、Яさんどうぞ!!」

 おぉ!他の連中から別の花束が。私は泣くまいと思っていたが、後輩の気使いに心打たれていた。そして、Yが再び口を開いた。

Y 「えー、では次に演奏会に実行委員に花束を・・・

 ん??

Y 「お疲れ様でした。皆さんなにか一言」

実行委員1 「皆さんのおかげで頑張れました!ありがとうございました!!」

実行委員2 「私・・・私・・・」

 実行委員1・2は張り切って挨拶をしているが、あれ?卒業生の挨拶は・・・

Y 「はい。ありがとうございました。では次に指揮者の皆さんに・・・」

 そうこうしているうちに話は進んでいった。我々卒業生の挨拶を飛ばして・・・。私は卒業生として後輩達に残すべき言葉を考えていたが、それも水の泡である。畜生。

 こうして、私の大学生としての最後の演奏会打ち上げはエンディングがバッサリとカットされるという意外(?)な形で幕を閉じた。世の中分からないものである・・・その考えていたエンディングは考えていたと他の連中に思われるのが嫌なのでここでも伏せておこう。

・・・
・・


 あ、それと、ちょっと今回の演奏会について・・・正直なところ、演奏会自体の成否は客が判断するのかもしれないが、それは結果であるわけで、過程を見てきた私としては、演奏会に関わった連中に賛辞を送って上げたくなるのである。たとえ客に、指揮者がキョドっているとか、アンサンブルの練習が足りないとか、フルートはヒサンだったと言われよーが、それはそれで、事実かもしれないが、別の見方をしても罰は当たるまいと思う。お疲れでした。
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風呂と犬
 私の通う大学には寮がある。普通の寮だ。管理人がいないのと、2人部屋をモルタルの壁で区切って強制的1人部屋を二つ作ったということ以外は何処にでもあるような学生寮ではないだろうか。暗い・汚い・臭い。全国の大学生寮なんてそんなもんdそして、寮には割と広い風呂があった。規則では寮生のみしか入浴を許されていないが、管理人がいないというのも手伝ってか、実際には全く関係の無い者も入っており、無法地帯と化していた。それが原因かどうかは定かではないが、ある時寮中に激震が走った。私は寮生ではなかったがいつものように風呂に入ろうと浴場に赴いたが、ある紙が入り口に貼ってあった。

『警告。レジオネラ菌が発生しました。当分の間風呂の使用は禁止します。』

※レジオネラ菌
 レジオネラ発見のきっかけとなったのが1976年アメリカで起きた集団発生。フィラデルフィアのホテルで在郷軍人総会が開かれ、その参加者などから患者が発生。在郷軍人をLegion(レジオン)といい、これから、「レジオネラ症」という名前が付けられる。レジオネラ症はレジオネラ属菌が原因で起こる感染症で、乳幼児や高齢者、病人などが抵抗力が低下している人がかかりやすい病気でレジオネラ肺炎とポンティアック熱とに分けられる。

 
 いやいやおかしいじゃない。レジオネラ菌て。当時の私でも菌の名前くらい聞いた事はある。そんな衛生環境だったのか。私が愕然としながら貼り紙を見ていると、ふと足元にダンボールが置いてあることに気が付いた。中はなんと郊外のスーパー銭湯の割引券だった。大学側の配慮だろう。しかも半端な量ではない。ダンボールに目一杯という感じだ。しかし、入浴終了間際のこの時間に未だ目一杯の量が残っているということが、その大学の対応策の不人気具合を物語っていた

Я (さすがに遠いって・・・)

 私もそう思ってその割引券には手をつけなかった。

Я (俺は家の風呂があるから平気だけど、生粋の寮生には辛いだろうな・・・)

 そう、簡易的なシャワー室はあるが、定員が少なすぎる。設備の点検にはどれくらいかかるのか・・・私は一抹の不安を感じながら寮を去ったのであった。

・・・
・・


 その後、寮の風呂も復活し、恐るべきレジオネラ菌の恐怖も皆が忘れた頃・・・その事件は起きた。その日私は、いつものように部外者であるにも関わらず寮の風呂を拝借しようと考えていたその時・・・

放 「最近、大学周辺で不審者によるいたずら等が報告されています。学生の皆さんは十分に注意してください

 こんな放送が流れた。実は、私の大学は、研究の支障になるからとかいう理由で放送というものが極端に少ない。にも関わらず最近では学生に注意を促す意味で放送が行われていたのだった。どうやら夜、研究室にロケット花火が打ち込まれたり、下校途中にロケット花火で狙われたりするという事件が起こっているようだ。

Я (気をつけるってどーすりゃいいんだよ)

 私は放送にそんな突っ込みをいれた。気をつけろと言われても、正直、学生レベルでも研究をしていて夜遅くなるなという方が無理である。しかし、そんな私の突っ込みが届くはずも無く、放送は続いていた。

放 「大学構内および研究室等にロケット花火が打ち込まれる被害が・・・

Я (知ってるって。じゃあ、廊下のシャワーを作動させんのか?)

 実は私の大学の研究棟には何メートル置きにシャワーが設置してある。もちろん体を洗うためではない。薬品等が発火し人体に燃え移った時に咄嗟に廊下へ飛び出て水を浴びるためである。しかし、このシャワーは付属の紐を引くと水が出るようになっているが、設置当時から誤って紐を引き廊下を水浸しにする輩が続出、そこで水が出ないようになっているという無用の長物である。そう考えている間にも長い長い放送は続く。

放 「さらに最近では男子学生寮の風呂入り口にも・・・

Я (何!?寮の風呂だと。これは人事じゃなくなってきたな・・・)

放 「大量のオキアミが撒かれるなどの被害が出ています。学生の皆さんは十分に注意してください


オキアミ??

※オキアミ
 節足動物門/甲殻綱/軟甲亜綱/オキアミ目の動物の総称。アミとも言う。形態はエビに似、プランクトン生活をおくる。食用、釣り餌、養殖の餌などに利用される。魚醤の原料としても知られる。ヒゲクジラ類の主要な餌料。


 いやいやおかしいじゃない。オキアミって。なぜオキアミが撒かれるのだ。いやそれよりも大学側がロケット花火襲撃犯とオキアミ散布犯を同一視していることも不思議でしょうがない。どんだけ幅の広い嫌がらせだ。しかも気を付けろって・・・オキアミにか?

 その日寮の奴に連絡したところ、実物は確認できなかったが、風呂の入口に大量のオキアミが撒いてあったのは事実らしい。後に残る異臭がそれを物語っていたそうだ。私は当分の間、寮の風呂を使うのをやめる事にした。臭いし

 現在新たな犯行はないものの、未だ犯人および犯行の意図は不明である。大学側はどう推理しているかわからないが、私は同一犯の犯行ではないと思う。しかし、ひとつ言えるのはロケット花火よりもオキアミの方がやっかいであるということだ。よって、私としては大学側にはロケット花火襲撃犯よりもオキアミ散布犯に対して優先的に対応してもらいたい

 また風呂が使えないのか・・・(←自分んちの使え)
事件な犬
Я (どーしてこんなことになったんだ・・・)

目の前には異常な光景が広がっていた。

歩道の上に倒れている男(←動かない)
泣きじゃくる女(←泣いているのではなく泣きじゃくっている)
なにかを叫ぶ熟女(←誰?)
救急車(←こんなに近くで見たのは初めて)
怒声を上げる救急隊員(←怖い)
人垣(←私達を取り囲んでいる)

Я (どーしてこんなことになったんだ・・・)

 私はもう一度心の中で呟いた。

・・・
・・


 その日は演奏会だった。みな日頃からのつらい練習から解放されたとあって、打ち上げでは大いに飲んだ。指揮者であったTさんも例外なく飲んでいた。ウイスキーをロックで。わからなくもないが、今考えれば1次会からそれはとばし過ぎだった


 実はTさんは大学に入ってから『栄養失調』と診断されたことがある強者だ。この飽食時代この国にいながらまさかの栄養失調。不健康さにかけては部員一同から一目おかれて(心配されて)いた。もうなんかやばいとか通り越して面白い(自分に関係なければ)。ある時彼は言った。

T 「最近、コーヒーとタバコしか口にしとらん

 そう言ったTさんの口元は確かに微笑んでいた。その言葉を聞いた時、私は、もしかしたら、彼はいかれt自分の限界を知りたいのではないか、もしくは、コアラやジュゴンのようにほぼ単一の食物のみで栄養の摂取をして生きていこうという人間としての大自然への挑戦だったのではないか、そう感じた。しかし、彼の唯一の誤算はタバコに栄養がなかったことであった。そういう問題じゃないか・・・
 
 まぁそんな彼である。アルコールに勝てるはずもなく、1次会場を出て、NOVAから出てきた少年達にその少年達より拙いであろう英語でカラみ、その後、2次会場直前で力尽きた訳である。

・・・
・・


 そんな彼にも彼女がいた。Mさんである。彼女はTさんの近くにいたためか彼の苦悩を知っていた。なので彼に触発され彼女も1次会で飲んでいた。私は彼女の話を良く聞いていたが、Tさんはどうこうと色々語っていた。そこまでは良かったが、1次会から2次会場へ移動する途中、あろうことかMさんは感極まって泣き出した。わたしはなんとかフォローしようと試みるが、酒の勢いがあるため中々泣き止んでくれない。そして2次会場の直前で私達は彼を見つけてしまった

M 「・・・!?・・・君・・・T君!?T君!!!?・・・いやぁぁぁぁぁ~!!!!(号泣)」

Я 「いや、あの、ちょ、落ち着い・・・」

M 「いやぁぁぁぁぁ~!!!!?(号泣)」

 いや意味わかんないし。死んでねーし。他の部員達はもう2次会に行ってしまったようだった。とりあえず部長としてなんとかしな・・・

M 「いやぁぁぁぁぁぁ~!!!(号泣)」

 うぜぇ。まだ9時前だ。駅前ということもあり通行人が次々に振り返っていく。

Я 「Mさん、大丈夫ですって。ほらTさんも起きてくだ・・・」

T 「ぅげぇぇぇ」

Я 「どぁぁぁ!?

 これまで全く動かなかったTさんが動いたと思うと、私の予想通りの結果を体現した

Я (いや、落ち着け。よく考えろ。何が最善なんだ)

 私は頭を働かせた。

Я (俺は酒は入っているが極少量だ。しかし、車は結構遠い場所に停めてある。仮にここに持ってくることが出来てもこの男を乗せることができるのか?少なくともこのゲ○くさい男はタクシーに乗車拒否されるのは間違いない。まずは2次会場から応援を・・・)

 と思った時。

 「んまぁ~~!なにやってんの!?」

 声が響いた。そこには着物を着た女性が立っていた。どうやらTが倒れている目の前の居酒屋の店主らしい。私は勝手に名前を『順子』に決めた

J 「なにしてんの!?早くどいてちょうだい!!」

 確かに店の前に泥酔した男が倒れていてはいい迷惑だ。しかし、今Tさんを動かすことは出来ない。

Я 「すいません。ちょっとこいつ飲みすぎちゃったみたいで・・・」

J 「そんなんは見ればわかるのよ!だからどいてって言ってるでしょ!」

 さすが、居酒屋店主である。飲みすぎたのを一目見て察知するばかりか、それを踏まえた上でどけということらしい。どさくさに紛れ、私は先輩であるTさんをこいつ扱いしていたことは気にしない

Я 「本当にすみません。今ちょっと動かせないみたいなので・・・」

J 「ったく。こんな飲み方して。あんたもね泣いたって駄目!!」

 順子(仮)は、まだ嗚咽しているMさんに吐き捨てた。いや駄目って言われても・・・。しかし、いつまでも順子やMに付き合ってる訳にはいかない。私は決心して携帯をてに取った。このままでは順子(仮)が救急車ではなく警察を呼びそうな勢いだったからだ。ふと周りを見る。通行人が遠巻きに私達を見ているのが分かった。それを順子(仮)は知ってか、さらに私に言った。

J 「ほんといい迷惑だよ!」

Я 「本当にすいません。・・・あ、もしもし。はいそうです。泥酔して・・・はい。場所は駅前の・・・はい。お願いします」

 私は生涯で初めて救急車を呼んだ。来るのにはおそらくそんなに時間はかからないだろう。しかし、その間順子(仮)は説教を続ける。私に向かって。まぁ、話を聞ける状態なのが私ぐらいだからだが、酒の飲み方について切々と語りだした。てか仕事しろ。Mさんは相変わらず泣いている。いいかげん立ち直れ
 しばらくすると救急車が到着する。いよいよ我々の周りの人達の注目を集めてしまう。救急隊員が降りてきた。私は事情を説明せんと、恰幅のよいおっちゃんに歩み寄る。

救 「どうしてこんなに飲んだんだ!!?」

 彼は私に向かって怒鳴った。いや、意味わかんないし。私か?私がなにをしたというのだ。どうして飲んだかなんてのはそこで今もゲロゲロやってる、それに聞いてくれ

救 「こんなんなるまで飲んで!!」

Я 「すいません。ちょっと羽目を外し過ぎたみたいで・・・」

救 「もう大人だろうが!!」

 大人だから酒飲んでんだろーがよと、言いそうになったが、自分が○○歳であることを思い出し素直に謝った。ふと気付くと周りには人だかりと言うよりも、人垣が出来ていた。どうやら、ほっておいたMさんがまた号泣し始め通行人足を止めさせたらしい。Mさん目線の先には倒れた男。駆けつける救急車。2人に増えた怒号を発する人間(うち1人は熟女)。冷静に見ると、もう何かの事件が起きたとしか見えない状況である。

Я (どーしてこんなことになったんだ)

 私は心の中で呟いた。しかし、まだ味方は現れない。。。

・・・
・・


 その後TさんはMさんに付き添われて救急車で病院に運ばれ事なきを得た。私は別の人間を2次会場から呼び、さらにMさんの付き添いにしてその場から去った。もう付き合ってられん。
 後日、Mさんから聞いたのは、Tさんが病院のベットではじめてMさんに向かって

T 「I love you」

 と言ったそうだ死ね。Mさんはそれを喜んでいた死ね。しかし、酔っててNOVAがフラッシュバックしたんじゃねーの?とは言えなかった。


つーかこんなオチはいらん。

騙す犬②
H 「俺の中で全部は消化できてないんだよね」

Hは言った。

Я 「へぇ」

 3月にあった合同演奏会の話である。どうやら代表であった彼は燃え尽き症候群あるにらしい。肩書きのみの幹部であった私にとって、3ヶ月近く過ぎた今でも消化できていないというのは信じられないであった。

Я 「なにがダメなわけ?」

H 「う~ん、なんか終わったって感じがしないんだよね」

Я 「ふーん、そんなもんか?あ、でもAさんとは飲んだんでしょ?」

H 「そーなんだけどさー」

 Aは幹部の1人であり、同時に指揮者もしているという発言力、権力、キャラ共に秀でた人物だった。そして、HはAからの評価を気にしている節があった。

Я (ったく、影響されやすい男だ。)

 大方、その飲んでる席で何か言われたのだろう。ただ、いくらAが豪快物事をハッキリいうタイプだとしても、この流されやすい男に面と向かってキツイ事を言うとは思えな・・・いや、そうでもないか。私は例の倍額払った打ち上げでAと話した事を思い出していた。

Я 「そーいや、Aさんも代表やりたいって言ってたよね」

H 「え?そーなの?」

 あ、やべ。どうやらこの話は知らなかった様だ。てっきりこの事で消化できていないとか言っているのだと思ったが・・・。兎にも角にもこの男の性格上おそらく・・・

H 「んだよーそれ、もーいーよー」


はい来た。


やはりこうなったか。

Я 「いーじゃねーか別に。終わったんだし」

H 「あー、もうAちゃんとかとすげー会いたくなくなったよー

会いたくなくなったって・・・ほっときゃ会わねーよ

Я 「なにが不満なんだよ。別にそういう風に思ってもいーじゃねーか」

H 「そういうのは直接言ってくれっつーの」

 分からなくもないが、Hの場合、直接言ったら今の倍は凹むだろーけどなメンドクセーけどフォローしてやるか。つーかBにそっくりだな

Я 「そーいや、Aさんは『自分も代表をしたかった』とは言ってたけど、『自分が代表をすればよかった』とは言ってなかったよ」

 Hはすぐに食い付いた。

H 「え?まじで?」

Я 「うん。確かに言ってた」

 嘘である。とっさにこんな嘘がつけるなんて・・・母さん、世知辛い世の中に揉まれ、息子は(以下略・・・

H 「なんだよー、そっかー、そこ重要だね!そっかー熱いね!!(意味不明)今すげー納得した!!(意味不m・・)なるほど、いやー熱いね!!(二回目)」

 ・・・すげー真顔で「100パー嘘だよ」とか言ってやりたい衝動に駆られたが、後がメンドーなので私にも慈悲があるのでやめておいた。やさしい嘘というやつである

しかし、BといいHといい、幸せなのか不幸せなのか・・・
騙す犬①
B 「俺はこのまま隠居でいいっすよ」

後輩のBは言った。

Я 「へぇ」

 どうやらサークルでのことを言っているようだ。私も彼も第一線から退いており、時には後輩の手際の悪さにヤキモキしていた。しかし、偉大なる先輩達の中にはそれを指導したがる連中もいる。そういった馬鹿者達の脅威に晒されたからか、彼は後輩の邪魔をしないように静かに部活の余生を送る、そう言っているのだ。正直Bに関しては後輩に口を出したがるのではないかと思っていた。しかし、本人がそう言ったのだ。私は彼も大人になったな、と感じたが、俄かには信じられない。ちょっと試してみた。

Я 「じゃー来年の合同演奏会とかどーすんの?」

 私のサークルは地震の演奏会とは別に他の団体と合同で行う演奏会がある。それには我がサークルを引退した者が、その合同演奏会の舵を取るという慣習があった。

B 「いや、俺はもう日の当たらない所で部活をしていきたいんすよ」

 なんと達観した台詞であろうか。いや、達観した振りをしているというべきか。後輩に口を出さないというのはわかるが、自分が運営できるイベントにも関わらないというのは格好つけ過ぎであろう。さらに挑発コメントしてみた。

Я 「へー、俺はBは絶対口出すと思ってたんだけどなー。てか出すでしょ?オメーは」

 Bは私の挑発コメントにムッとしたようだった。

B 「いや、別になんにもしないっすよ。もーいいっすよ」

 あ、ふてた。なぜにふてる?私にそういう目で見られたことが不満か?まぁいいやとりあえずフォローしてみよう。

Я 「へー、代表とかしないんだ?」

B 「しないっす。もーいいっすよ」

Я 「そっかー。もったいないなー。実はねウチの代の中じゃ、けっこー期待してたんだよね。いやね、毎年さ、代表の器っつーの?ある奴のいる年といない年があってさー。去年はHがやったけど、その前とかはなんかモメたらしんだよ。で、今年はBがいるから安心?みたいな。俺らはそういう感じで見てたんだけどなー」

 100パーほぼ嘘である。とっさにこんな嘘がつけるなんて・・・母さん、世知辛い世に揉まれ、息子は騙される方から騙す方へ足を踏み出そうとしています・・・

B 「まじっすか。へー先輩達はそんな感じだったんだ・・・」

 嬉しそうなB。単純なかわいい奴だ。代表の器という単語に魅せられたか。しかし、次にBが発した言葉は俺の予想を遥かに上回っていた。

B 「実は、もうT(指揮者、Bとタメ)には話してあるんすよ。俺が代表するから、お前は指揮しろって」


もうやる気満々じゃねーか。


 勢いで代表やるって位は言うと思っていたが、まさかすでに行動を起こしていたとは・・・てかそのつもりなら達観したような台詞を吐くな。
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